本ブログポストでは、会計レポート開発シナリオにしたがいSAP S/4HANAに登録されている会計のデータをCDSビューからSAP Analytics Cloudにインポート接続で取り込む方法を紹介します。SAP S/4HANA(オンプレミス)とSAP Analytics Cloudを接続して本ブログの手順を試す場合は、環境構築と接続設定(SAP クラウドコネクタ・SAP Analytics Cloudエージェント)が完了し利用できる状態である必要があります。
下記の順番でSAP S/4HANAの会計データをSAP Analytics Cloudに取り込む方法を説明します。
- シナリオ
- データソースの確認(CDSビューの探し方)
- SAP Analytics Cloudの接続作成
- SAP Analytics Cloudのモデルにデータをインポートからストーリーでデータを確認
1. シナリオ
SAP S/4HANAに格納されている会計のデータをSAP Analytics Cloudで参照・分析したいといった要件があります。主な表示項目・形式の要件としては、売上総利益や売上などの勘定科目に関する会計伝票のデータをG/L勘定、利益センタや会社コード、他の切り口で集計してPL形式でデータを参照・表示するといったものです。まずSAP S/4HANA開発環境にて要件を満たすCDSビューが標準機能として提供されているかをSAPヘルプポータルおよびFioriビューブラウザで確認します。確認した結果CDSビュー(仕訳アナライザ:C_GLLineItemsQ0001)がデータソースとして利用できそうであるとわかり、このさっそくSAP S/4HANAとSAP Analytics Cloudとの接続を作成し、データをインポートしたいと思います。
2. データソースの確認(CDSビューの探し方)
SAP S/4HANAに要件を満たすCDSビューが用意されているか探します。CDSビューの探し方は主に下記2つがあります。
1.SAPヘルプポータルから探す。SAP Help Portal : CDS View
※本ブログポストで扱うCDSビューのヘルプ:SAP Help Portal : Journal Entry Analyzer
2.Fioriビューブラウザから探すには下記作業手順を参照してください。
作業手順
①Fioriラウンチパッドを起動しログインします。
②画面上部のタブ「クエリデザイン」をクリックし、ビューブラウザのタイルをクリックします。表示メニューがログインユーザによって異なることがあります。メニュー:ビューブラウザが表示されていな場合は、下記のロールをユーザに割り当ててください。
ロール:SAP_BR_ANALYTICS_SPECIALIST
③ビューの一覧が表示されます。一覧のすぐ上の検索ボックスにキーワードを入力してCDSビューを探します。
④検索ボックスにキーワードを入力します。ここでは「仕訳アナライザ」と入力します。一覧に該当のビューが表示されます。
⑤表示されたビューをクリックするとビュー詳細画面が表示されます。この詳細画面では、定義されている項目が確認できます。
⑥SAP Analytics CloudからCDSビューを検索する際に、SQLビュー名称で検索・確認する必要があるため、CDSビューの「注釈」定義を確認します。タブ「注釈」をクリックします。下記のアノテーション名の値を確認します。
・ANALYTICS.QUERY:true
・ABAPCATALOG.SQLVIEWNAME:CFIGLLITMQ0001
アノテーション「ANALYTICS.QUERY」が’true’で、「ABAPCATALOG.SQLVIEWNAME」の値の頭に’2C’を付けることにより分析用途のクエリとして扱われSAP Analytics Cloudなど分析ツールからSAP BW接続でCDSビューにアクセスできます。アノテーションに関する詳細は、下記ヘルプを参照してください。
⑦詳細画面右上のコンテンツ表示をクリックし、SAP S/4HANAにデータが登録されているかを確認します。コンテンツ表示をクリックすると、プロンプト(変数)入力画面が表示されます。OKボタンをクリックして実行するとCDSビューで取得できるデータが表示されます。ビボットテーブル形式で表示されるので、表示したい項目をデータに追加して確認します。
Fioriビューブラウザで、取得したい項目およびデータが入っていること確認したので、このCDSビューを使用することとしました。次にSAP Analytics Cloudにデータをインポートします。
3. SAP Analytics CloudとSAP S/4HANAの接続定義
※既に接続定義を作成している場合は、本Topicはスキップしてください。
SAP S/4HANA(On-Premise)とSAP Analytics Cloudとの接続については、下記のブログポストを参照してください。
SAP Community ブログポスト:RISE with SAP – S/4HANAとSAP Analytics Cloudの接続方法
(補足)SAP S/4HANAの接続について
データソースを選択画面では、「SAP S/4HANA」接続を選択することもできますが、ここで選択できるSAP S/4HANA接続はODataサービスによる接続となります。SAP Analytic Cloudでは、OData取得でプロンプトがある場合サポート対象外であるためエラーが発生します。詳細は下記SAP Noteを参照してください。
4. SAP Analytics Cloudへのデータのインポートからストーリーでデータを確認
作成した接続を使用してデータをアップロードしてモデルを作成します。
作業手順
①SAP Analytics Cloudにログインしてメニュー「モデル」を選択します。
②モデラへようこそ画面の「データソースから取得」を選択します。
③データソースを選択画面で、「SAP BW(BW/4HANAを含む)」を選択します。
④SAP BWからモデルを作成画面で、前段で作成した接続をドロップダウンリストから選択し「次へ」をクリックします。
⑤SAP BWクエリの新規クエリ画面で、クエリ名を入力(判別しやすい名称を推奨)。検索ボックスに対象のCDSビュー(2C + SQLビュー名:例2CCFIGLLITMQ0001 仕訳アナライザ)を入力し検索します。表示された項目をクリックして「次へ」をクリックします。
⑥プロンプトの設定画面が表示されます。画面左側に赤い★アイコンと項目名が表示されます。この項目は必須入力のフィルタ条件です。下記のプロンプト項目についてクリックすると画面右側に選択できるリストが表示されるので、値を設定していきます。なお、必須項目以外にもフィルタ条件を設定したい場合は、画面左下の「必須のみ表示」のチェックボックスをOFFにします。設定後、画面右下の「次へ」をクリックします。
・基準日(必須入力):ここでは、自動設定されたクエリ作成・実行日付
・元帳(必須入力):0L(リーディング元帳)
・会社コード(必須入力):Fioriビューブラウザで確認した会社コードを選択
・元帳の会計年度(必須入力):Fioriビューブラウザで確認したデータが登録されている年度を選択
⑦BWクエリの構築画面が表示されます。この画面でインポートする項目を選択しクエリを作成します。デフォルトの設定では、分析項目に2つの項目([会社コード]と[G/L勘定])と複数のキー数値が選択されて表示されています。データ分析で必要となる項目(例:転記日付、利益センタ、原価センタ、借方/貸方コードなど)を画面左側の「利用可能データ」セクションからドラッグアンドドロップで選択済みデータの枠に配置します。
仕訳アナライザは分析項目が多いので、検索ボックスを使用すると対象項目をすぐに見つけられます。追加項目は選択済みデータ枠の一番下に配置されます。既に配置されている項目間に配置はできません。
⑧階層情報について設定をします。階層情報が設定可能な項目(例:G/L勘定)には、項目名の後ろに階層アイコンが表示されています。アイコンをクリックすると、どの階層を取り込むかを選択できるので適切な階層を選択します。本手順では、全社共通で使用する想定の財務諸表バージョンを選択します。値を選択する画面右側にドリルレベルの設定画面が表示されます。デフォルトで[2]、ドリルレベルも設定できます。最大ドリルレベルは項目により異なります。階層情報をインポートする項目について各々設定します。転記日付については、モデル作成後に日付の設定で設定するため、デフォルト設定のままとします。
※階層を選択するセクションでは、デフォルトでは階層の説明が表示されます。右側のレンチマークをクリックするとID(技術名称)も表示するように設定できるので、対象の階層を探すのに便利です。
インポートする項目についてキー情報だけか、テキスト情報も含めるかも設定することができます。レンチマークをクリックするとプレゼンテーションの選択画面が表示されるます。インポートする項目についてONの設定にします。
設定が完了後、OKボタンをクリックして画面を閉じます。「SAP BWクエリの構築画面」の右下の作成をクリックすます。
⑨データアップロードが正常に完了するメッセージとともに、ドラフトデータに前段で指定したクエリ名が追加表示されます。このクエリ名をクリックします。
⑩モデルの編集画面が表示されます。ドラフトデータが表示されます。階層設定した項目「例:G/L勘定」を選択すると画面右の詳細画面が切り替わります。階層とテキストを設定したので、その設定が反映されていることが分かります。他階層とテキスト設定した項目があれば確認します。
⑪画面右下の「モデル作成」をクリックします。
⑫確認画面が表示されます。作成ボタンをクリックします。
⑬モデルの名前を登録しOKボタンをクリックします。
⑭モデラのワークスペース「データ管理」画面に遷移します。インポートジョブのセクションにインポート実行したジョブと画面右側のステータスに実行結果とインポートしたデータ件数などが表示されます。
⑮モデラのワークスペースのドロップダウンリストで「モデル構造」を選択するとモデルの構造ビューやインポートされたデータが確認できます。画面左の「一般」セクションで階層を設定した項目を選択すると「ディメンジョンの詳細」画面に階層が作成されていることが確認できます。
画面左上の「<」または「閉じる」をクリックすると前画面に戻ります。
⑯日付項目(例:転記日付)をインポートする項目として設定している場合、その日付項目について会計設定ができます。画面左上のレンチマークのアイコンをクリックし、モデル推奨設定の画面を開きます。メニュー「日付設定」をクリックすると右画面が専用の設定画面に変わります。最初に一番下の「会計年度を使用した日付ディメンジョン」のトグルをONにします。その後、上の項目が設定可能になります。開始月、会計年度を示す:会計期間名ラベル:を設定し、OKボタンクリックし画面を閉じます。モデルを保存します。
⑰作成したモデルをもとに分析用途のストーリーを作成します。下記左下図のようにテーブルのコンテンツに階層設定した項目を配置すると親階階層から下の階層に展開するといった形式で表示されます。また表示する階層はPL項目のみ表示するようにフィルタ条件に設定します。右下図は、日付項目について会計年度の設定した結果、年度のはじまりが指定した月(例:4月)になっていることが確認できます。
まとめ
SAP Analytics CloudにSAP S/4HANAのデータをCDSビュー元にデータをインポートする方法の基本的な事項と会計データを表示させる際に一般的に使用する機能や設定について紹介しました。まずは、本ブログポストで紹介した手順を実施し、簡単にSAP S/4HANAのCDSビューからデータを抽出できることを体験いただければと思います。
また下記SAPヘルプを参考に既存モデルに対してデータをインポートする方法などSAP S/4HANAからデータを抽出する方法の知識を増やし、SAP Analytics Cloudの開発やご利用につなげていただければ幸いです。
・SAPヘルプポータル: ヘルプにアクセス後、SAPデータソースのセクションで「SAP BW」を選択。